Breitling’s Navitimer 8

「語り継がれる未来」へ羽ばたく新生ブライトリング

2017年夏にブライトリングCEOに就任したジョージ・カーン氏が、2月上旬に来日。東京ロードショーと名付けられた場所で、ブライトリング正規販売店のオーナーやセールスマスター合計200名以上に向けて、新作「ナビタイマー 8」や新しいブライトリングの方向性についてプレゼンテーションをしました。
そして、その後の時間を割いて、一部メディアを集めて開催された合同インタビューの場で、新生ブライトリングをいかに「語り継がれる未来」へ導くかについて熱く語ってくれました。
まず、カーンCEOが最初に強調したのは「ブランドの再構築を目指しているのではない」ということ。
「ブライトリングは時計業界の中でも、他とは異なる特殊なブランドです。“プロのための計器”という製品哲学に象徴される航空界との密接な関係は、多くの時計ファンがご存知でしょう。でも、ブライトリングには、世に知られていない偉大な歴史や実績が、もっとたくさんあります。セーリング、自動車、気球などとの深い関わりは、残念ながらブライトリング・ジェットチームほどは知られていません。マイルス・デイビスが愛用していたこと、ジェームズ・ボンドが着用していたこと、宇宙へ最初に行ったクロノグラフであることも、それほど有名ではありません。ブライトリングは技術面だけでなく、デザイン的にも画期的なモデルを数多く生み出してきました。たとえば50年前、ブライトリングは女性向け腕時計でも成功していました。
エレガントでモダン、そして贅沢な存在感。様々な魅力を兼ね備えて、いま以上に広く認知されるブランドへ。ブライトリングの多彩な魅力を、もっと広めるべきだと思うのです」
その一環として、スーパーオーシャン ヘリテージやトランスオーシャンなどに用いられてきたロゴが、全コレクションに採用されることになりました。確かに、かつてウィリー・ブライトリングがブライトリング社をモダンなブランドに改革した頃、ロゴに翼はありませんでした。その後、アビエーションにフォーカスする過程で、Bのロゴに翼が付いたのです。
「決してアビエーションをおろそかにするつもりはありませんが、1950~1960年代に使用されていた翼のないロゴを今後採用していくのは、ブライトリングの幅広い魅力を展開する、という我々の意思表示でもあります。ブライトリングの歴史の引き出しを開ければ、まだまだ宝物がいっぱい詰まっています。私たちが目指しているのは、クールでハイエンド、でもインフォーマルな(堅苦しくない)コレクションです」

ブライトリングの核心に立ち返って生まれたナビタイマー 8 シリーズ

新CEO就任から半年、ジョージ・カーン氏がプロデュースした初めてのコレクション「ナビタイマー 8」が発表されました。“ナビタイマー”といえば、世界で初めてクロノグラフに航空用回転計算尺を搭載して、1952年に誕生した不朽の名作です。しかし、ナビタイマー 8には回転計算尺がありません。というのも、ナビタイマー 8のデザインルーツは初代ナビタイマーが誕生する以前、ブライトリングが英国空軍にコックピット・クロックを納入しはじめた1930年代にあるからです。
「新しいナビタイマー 8は、ブライトリングが航空界の黎明期にもたらした革新と業績に対するオマージュの表れです。“8(フランス語で「ユイット」)”は、3代目ウィリー・ブライトリングが1938年に設立した“ユイット・アビエーション部門”に由来しています」
このユイット・アビエーション部門は、オンボード・クロノグラフなど航空機のダッシュボードに装着する計器のパワーリザーブが、当時は8日間が基準となっていたことにちなんで命名されたスペシャルチーム。視認性や耐久性に優れた多数の航空計器を開発し、ハイクオリティな航空用の腕時計クロノグラフも手がけました。ユイット・アビエーション部門は輝かしい実績を残し、ブライトリングの第一次黄金期を築いたイノベーション集団ともいえます。
ナビタイマー 8は、まさにその1930年代~40年代の航空計器を範としています。初代ナビタイマー以前の航空界との関わりは、これまであまり語られてきませんでしたが、ブライトリングにとって航空界との絆を深めていった極めて重要な時代です。つまり、ナビタイマー 8は、ブライトリングの核心に立ち戻ったコレクションなのです。
ナビタイマーの名が付きながらに回転計算尺がないことに違和感を覚えたファンもいるかもしれませんが、ナビタイマー 8の歴史的背景や「ナビゲーション+タイマー」という語源をたどると、“回転計算尺がないデザイン”に納得がいくはずです。実際、過去には、ナビタイマーの名を冠しながら回転計算尺のないモデルが、いくつも存在しています。回転計算尺の有無によって、ナビタイマー 8の正統性を否定する必要はないのです。

ナビタイマー 8の登場で、広がる選択肢

ナビタイマー 8は伝統的な要素を巧みに取り入れながら、モダンに仕上がっています。経過時間が計測できる三角ポインター付きの両方向回転ベゼルは、周囲に滑り止めのノッチが大胆に刻まれ、手首にフィットする短めのラグと好相性。強力な夜光を塗布した大きなアラビア数字が目をひくダイヤルには、クラシックなレイルウェイ・ミニッツトラックが配され、両面無反射コーティングを施したサファイアクリスタルが高い視認性を確保しています。しかも、一目でブライトリングとわかる、絶妙なデザインです。
ラインアップは、自社開発・製造Cal.01を搭載した「ナビタイマー 8 B01」、信頼性の高いCal.B13搭載の「ナビタイマー 8 クロノグラフ」という2種類のクロノグラフと、シンプルな3針オートマチックの計3タイプ。これにデイ&デイトとユニタイムも加わる予定です。
「自社製ムーブメント搭載モデルは、インダイヤルが反転色となった”パンダルック”の横3つ目デザイン、ベゼル前面やブレスレットの中央のコマがポリッシュ仕上げになっているのに対して、ナビタイマー 8 クロノグラフはワントーンの縦3つ目デザイン、ケース&ブレスはスポーティなサテン仕上げとしました。また、サファイアクリスタルバックになっているのは自社製ムーブメント搭載モデルだけ。こうして見た目でもすぐわかるようセグメント化しています。
もちろん、ナビタイマー 8は新しい追加シリーズであり、従来のナビタイマー 01も継続していきます」
ただし、前述のようにロゴマークはナビタイマー 01も含めて、今後は翼のない新ロゴに変更されるため、既存モデルの購入を予定している方は注意していただきたい。

クラブ・ブライトリング、ジャパンリミテッドは継続

“プロの計器”という製品哲学や“100%クロノメーター”といった独自性は継承しつつ、アイコニックなデザインによって、より広く一般に認知されるブランドを目指します、とカーンCEOは語りました。
「そのためにも、ラインナップ全般を明確にセグメント分けしていきます。陸・海・空とオールパーパス(多目的)の4ラインに整理して、空はナビタイマー、海はスーパーオーシャン、というふうに。クロノマットはオールパーパスを担うことになります。また4つのラインを“エレガント”“エレガントスポーツ”“スーパースポーツ”の3段階に分け、それぞれのセグメントに各シリーズを配していきます。たとえばナビタイマー 8なら、“空”דエレガント”のセグメントに収まるモデルです。現状で空いているセグメントは、今後の新作をご期待ください。
サイズ的には、ややコンパクトなモデルを増やすつもりです。例外を除いて、クロノグラフは42mm~46mm径、3針モデルは39~42mm径が目安でしょうか。手首が細めな日本の方には、これまで以上に適したサイズが増え、プライスレンジも広がるとお考えください」
では、クラブ・ブライトリングといった日本独自のカスタマーサービスや、例年人気の高いジャパンリミテッドなどの展開はどうなるのでしょうか。
「ブライトリングにとって、日本は極めて親和性の強い市場です。アビエーション面の認知と共感度が高く、これまでのブライトリング・ジャパンの取り組みが成功しています。それを変更するつもりはありません。クラブ・ブライトリングも日本特別モデルも続けていきます。ただ、ジャパンリミテッドは、やや小さめで、レギュラーモデルよりクラシック&エレガントで、日本人テイストに合った素晴らしいモデルが多いのですが、これは、新生ブライトリングがこれから打ち出していく新コンセプトに通じるものがあります。世界展開モデルとして先に発売する可能性があるという意味で、今後は日本だけが独占する限定モデルは、少なくなるかもしれませんね(笑)」
ポジティブな変化は、既存のブライトリングファンも大いに望むところでしょう。

(執筆:時計ジャーナリスト 大野高広 / Written by Takahiro Ono)