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ナイジェル・ラム選手、予選で断トツのコースレコードを叩き出したものの・・・

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ2016年シーズン第6戦が、9月3日(土)・4日(日)、ドイツのラウジッツにあるにユーロ・スピードウェイで開催されました。いつものレーシングカーに代わって、この日は全長3.2kmのオーバルトラック上空を、最高時速370kmでエアレース機が疾走。ヨーロッパラウンドの最後を飾るにふさわしい舞台となりました。

3日の予選で最高のパフォーマンスを披露したのは、ブライトリング・レーシングチームのナイジェル・ラム選手! 予選2位のマット・ホール選手に1.303秒もの大差をつけて53.110秒を叩き出したのです。ちなみに室屋義秀選手は54.700秒で予選3位、年間ランキング争いでトップを快走するマティアス・ドルダラー選手は55.470秒で予選7位。ラム選手のコースレコードは、翌日の決勝を通じて誰も破ることはできず、室屋選手のレース分析を担当するベンジャミン・フリーラブも「すべてのセクションでパーフェクトなフライトだった」と舌を巻いたほど。

実は、室屋選手は予選2本目のフライトで、そのラム選手のタイムに挑んで限界まで攻め込み、オーバーGで失格。ただ、これは意図的なチャレンジだったので納得済みの結果でした。しかし、翌4日の決勝でニコラス・イワノフ選手と対戦したラウンド・オブ・14、室屋選手はまさかのオーバーGで失格となってしまったのです。

「(2秒のペナルティを受けた)イワノフ選手のタイムは分かっていたので、あまり攻めずに、自分のペースで飛んでいました。あのコーナーでのオーバーGは全く予期しない展開だったので、かなり悔しいです。機体のアップデートだけでなく、気温や空気密度など、気象条件に対してもあらゆる角度からの対策が必要でした。今回はパイロット側の準備不足です。ここ3戦、苦しい戦いが続いていますが、これからしっかりトレーニングと対策を重ねて、残り2戦、持ち直していきたいと思います」(室屋選手)

一方、予選で最速タイムを記録し、「今日の勢いを決勝でも維持したい。ようやくいろいろと噛み合ってきた」と語っていたナイジェル・ラム選手ですが、ラウンド・オブ・14で1秒のペナルティを受けて敗退。「今日はとにかく全力を出すことだけを考えていた。それはつまり、ペナルティを受ける可能性も高くなる。自分のチームが全力を尽くして調整し、自分のフライトも悪くなかったが・・・」と肩を落としました。

チームメイトのフランソワ・ルボット選手も、決勝で3位に入ったピート・マクロード選手と対戦したラウンド・オブ・14で敗退。「今までで一番好きなレーストラックだ。心の底から楽しむことができた。とはいえ、決勝レース日のコンディションはベストではなかったので、主翼がストールしないように注意していた。自分なりのベストを尽くせたので、後悔はしていない」とコメントはあくまで前向きです。

結局、レースは第5戦に続き、マット・ホール選手が優勝。ただ、マティアス・ドルダラー選手も2位となり、年間ランキング1位は死守。ホール選手は「今回のコースは自分のスタイルに合っていたし、調子が戻ってきたことも嬉しい。昨年チャンピオンシップ2位を経験し、最終戦ラスベガスで最後の最後まで必死になって戦った。マティアスにはその経験がなく、私には失うものがない。次戦でどうなるか見ものだね」と、10月1・2日に迫った米国インディアナポリス戦でのドラマティックな展開に期待をかけます。

なお、ラウジッツ戦で5位となり、年間ランキング3位に立っていたベテランパイロットのハンネス・アルヒ選手が、オーストリアでのプライベートヘリコプター事故で急逝しました。48歳でした。誰からも愛されていた同氏のご冥福をお祈り致します。

ナイジェル・ラム選手、最終戦キャンセルで総合3位にわずか3.25ポイント届かず!室屋義秀選手は総合6位に終わる

レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップ第7戦(10月1日・2日)の会場は、米国インディアナポリス・モーター・スピードウェイ。インディ500やNASCAR、MotoGPのほか、過去にはF1も行われたモータースポーツの聖地で、初開催となったエアレースを制したのはマルティアス・ドルダラー選手でした。今シーズンの7戦中優勝3回、2位3回と安定した成績を収め、最終戦を待たずにワールドチャンピオンの座を獲得したのです。 そのマティアス選手とラウンド・オブ・8で対戦したのが、同じ2009年ルーキー組の室屋義秀選手でした。レース後に「シャープなフライトができたと思いますが、マティアスにそれ以上のタイムを出されてしまった。残念です」とコメント。ラウンド・オブ・8全体で2番目のタイムを出しながら、ファイナル4に進むことができませんでした。

この日、ドルダラー選手を唯一追い詰めたのが、ブライトリング・レーシングチームのナイジェル・ラム選手でした。ファイナル4でドルダラー選手を残してトップのタイムを叩き出し、プレッシャーをかけると、ドルダラー選手は全力のフライトで挑み、ラム選手のタイムを上回ってフィニッシュしたのです。

ナイジェル・ラム選手いわく「私が2014シーズンのチャンピオンになれたのは、安定したフライトを続けていたからだ。今シーズンのマティアスはずっと安定していた。今日はハッピーだ。表彰台に登れるのは嬉しい。しかし、2位はあくまで2位なので少し残念だ」 チャンピオンは決まったものの、この時点でナイジェル・ラム選手は総合ランキング3位までわずか3.25ポイント差。その点、総合6位の室屋選手も、目標の総合3位まで9.5ポイント差。ともに最終戦で挽回を期していた・・・はずでした。

10月16日に開催された最終戦ラスベガス大会は、強風が吹き荒れる中、ラウンド・オブ・14の7組中5組が終了した時点で、コンディションが悪化。レースの中止が決定してしまったのです。これにより前戦インディアナポリス大会までの結果をもって、2016年シーズンのランキングが確定しました。ブライトリング・レーシングチームの二人はナイジェル・ラム選手が4位、フランソワ・ルボット選手が12位、ブライトリング・パートナーの室屋選手は6位。

大会キャンセルという結果を受けて室屋選手は「今日は勝負するコンディションではありませんでした。年間総合3位という目標に届かなかったのは残念ですが、このレースがキャンセルになったからではなく、それまでのレース結果の積み重ねですから仕方ないですね」と語りました。

そして9シーズンにわたり参戦を続けたナイジェル・ラム選手が、今大会をもってレッドブル・エアレースを卒業します。フレンドリーで紳士的な人柄が多くのファンに愛され、パイロット仲間からも信頼されてきた彼は「最終戦を飛べなかったという心残りはありますが、何とかパイロンを立てようと懸命に頑張る大会スタッフたちに心打たれました。レースから静かに退席し、今後どうするかじっくり考えるつもりです」とコメントしました。

ベテラン・パイロットが去って寂しくなる一方、若手パイロットの挑戦が始まろうとしています。2015年のチャレンジャークラス王者で、来年のマスタークラス参戦に向け、今シーズンはナイジェル・ラム選手の指導のもと育成プログラムを受けていたフランス人パイロットのミカ・ブラジョー選手です。ナイジェル・ラム選手はレースを戦いながら、勝つためのノウハウのすべてをブラジョー選手に伝えるという大仕事をしていたのです。

正式なスケジュールはまだ発表されていませんが、数ヵ月後には新たな2017年シーズンの開幕を迎えます。ブライトリング・レーシングチームはミカ・ブラジョー選手を迎え入れ、全面的なバックアップを約束しました。この若きパイロットが旋風を巻き起こすか、あるいは「次のシーズンこそ、総合優勝を狙います」という室屋義秀選手がスタートダッシュに成功するか。すでに各チームは寸暇を惜しんで準備を進めています。


2015レースマップ

2015エアレースマップ

RESULT

Pilot Nat Pts
Nigel Lamb GBR  
Hannes Arch AUT  
Paul Bonhomme GBR  
Nicolas Ivanoff FRA  
Pete McLeod CAN  
Matt Hall AUS  
Matthias Dolderer GER  
Martin Sonka CZE  
Yoshihide Muroya JPN  
Kirby Chambliss USA  
Peter Besenyei HUN  
Michael Goulian USA  
François Le Vot FRA  
Juan Velarde ESP  

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